詩月は紙袋を広げポスターを手渡す。




「自由に持っていってもらえると助かる」




「いいの!?」




「野郎が持っていても、気持ち悪いだけだろ!? 

ましてや自分も映ってるポスターなんて」




「ちょっと……」



郁子が声を上げ笑っている。




「緒方……悪いが、後を頼んでいいか。

Nフィルの合わせがあるんだ」




「えっ!? 周桜くん?」




「適当にばらまいていいから」




スマホで時間を確かめ、紙袋ごとポスターを郁子に手渡す。


「礼はするよ。後でメール入れるから」


小声で告げ、出口に向かう。




「しょうがないな」




郁子は頼まれ事をされ、まんざらでもないような顔でボスターを手にとった。




詩月は歩きながら、鞄の隅に仕舞ったアイドルグループXceon(エクシオン)のチケットを思い浮かべた。



面と向かって誘うのは、なんだか照れ臭いと思うし、アイドルグループなどに興味はない様子だったなとも思う。