学長は、フローラ化粧品とジョニー芸能の双方へ愛想を振り撒き機嫌をとり、出来上がった紙袋いっぱいのCMポスターや宣伝用の試供品を受け取り、忙しく大学へ戻って行った。





「周桜、たまにはオケにも顔を出せよ。
お前なら次期コンマスもいけるよ」




金管楽器、トランペット奏者は、CMアンサンブル演奏の出来に気を良くしたのか、詩月に無責任なことを言う。




「ご冗談を……」



「可笑しなことを言うな。
Nフィルと、あれだけの演奏をしているのに」




「……安坂さんと同じことを言うんですね」




「ん!? 不満か?」




「いえ……不安だらけで」



「お前が!?」



出口へ向かう通路に低い声が響く。




「詩月さーん」


Xceon(エクシオン)のリーダー昴が、空気を読まない明るさで紙袋いっぱいのポスターを提げ詩月に駆け寄りニコリと笑う。




「CMのポスター。
前みたいにさ、貼る側から剥がされるほど人気がでるといいね」