――あなたの演奏が、あの子達の意識を変えたのよ



病室で旧マネージャーが語った言葉が頭の中に響く。



――教えられたのは僕のほうだ。



電車に揺られながらも、電車を降りNフィルへ向かう間も、練習中も、旧マネージャーの言葉が、詩月の耳を離れなかった。



――どんなに才能があっても努力し、頑張らなければ輝かない。
自分自身を磨こうとしない原石は、輝かないダイヤモンドだって。




もっと先へ、もっと高みへ、立ち止まってる時間なんてない。

迷っている時間なんてない。



押し寄せる波のように、込み上げてくる感情が溢れ、詩月は感情委せに演奏する。



超絶技巧のような詩月の演奏にオケは、戸惑いながら懸命に、食らいつくように演奏する。


マエストロは、その様を満足げに何度も頷きながら、指揮棒を振る。