「よく合わせたな。全然違う曲調だろ? 自由だな」


「自由なのかな」



「自由、『Free』の方ではなく『Liberty』の方な」


「Libertyって、自由の女神像の?」



「そう、解放とか束縛されないって意味があるよな」


確かに、周桜くんは束縛されたくないのかもしれない。

Liberty――言い当てていて妙だな。


郁子は理久が詩月のことを、兄か親のように熟知しているんだなと感じる。



「Libertyって、ドイツ語だと『Liberte(リベルタ)』なんだよな」



「そうなんだ」



「留学するなら、ドイツ語は喋れた方がいいぞ」



「理久は話せるの?」




「俺? 必須科目だぜ。そこそこは話せる、詩月ほどではないけどな」



「周桜くんは話せるんだ」



「あいつはペラペラだ。
おふくろさんと話す時は、ドイツ語なんじゃないか」