「それって……」



「『信じる信じないは貴女しだい』みたいな話だよな」



「他の人はともかく、周桜くんが聴いた二重奏なら……信じると思う。
周桜くんって街頭演奏してるから、転校してくる前から信奉者が多いし、ＣＭが流れてからは追っかけまでいるくらいだから」



「そんなに？」



「街頭演奏の場所もリサーチされてるみたいだし、Xceon(ｴｸｼｵﾝ)のコンサートの時も大変だった」



「へぇ～、アンコールはサプライズがあったらしいな。
バイト先の女子が、涙がでるくらい甘く優しい曲を詩月が弾いたって話してたけど……ショパンの夜想曲でも弾いたのか？」



「エルガーの『愛の挨拶』を弾いたの。
『Jupiter』に合わせて」


郁子の頬が淡く紅に染まる。