「えっ!? お母さんにしかなつかないって」



「ん!? あいつの家には猫が2匹いる。
仔猫の頃から、あいつが育てた猫がいるんだ。
大人しい猫で、引っ掻いたり噛んだり絶対しない猫だ」



「そう……なの?」



「あいつのピアノとヴァイオリンを聴いて育った猫だからな。
スマホの待ち受けも、たしかその猫だ」



あの時。
ただ、付き合いで猫展にと言ったのではなかったんだ。



郁子の顔に笑みが戻る。



「郁子、お前は願掛けしないのか?」



「f字孔に銀貨が入らないの。
周桜くんは、表も裏も入れたのよね?」



「ああ、みたいだな。
何日か前に、ここで楽譜を書いてたな。
出来上がりしだい、貢に見せるとか話していたけど」



「楽譜?」



「何も聞いてないんだな。

ヴァイオリンと竪琴の二重奏だとか……」