差し出されたのは白い手。
「ん」と顎をしゃくりながら手を指す。


私は微妙な気分のままその手を掴んで立ち上がる。


私は今さっき、蓮とキスした。


理由は分かっている。


あの美人の私立校生徒に付き合っている証拠を要求されたからだ。


ただ、それだけ。なのに。


明らかに私は動揺していて、でもそれを悟られたくなくて。


スカートをはたきながら深く深呼吸をした。


「ねえ。さっきの人、誰?」


出来るだけ平然を装って質問する。


「……さあ?」


考えたあとにそう答えた蓮の表情は、私にそれを言いたくないとか、そんなんじゃなくて。


「……え?」


ただ純粋に質問の答えが分からなかった又は知らなかったと物語っていた。