奏くんは首をかしげて私をじっと見つめてくる。
どんな女の子だって、この顔で見つめられては成す術がなくなる。
「……なんでもないよ。」
そういえば、
「奏くんは何でここに?蓮なら二度寝中だよ。」
そう尋ねると奏くんは眉尻を少し下げて微笑んだ。
「蓮が少し心配になって。ちゃんと起きてるかなーって。」
ああ、やばい。
凄い友達愛…!!
「…でも蓮、二度寝しちゃってるんですか。どうしよう。蓮、遅刻したら…」
蓮ごときのためによくぞそこまで!!
心のなかで感嘆の叫びをあげながら私はドアを指差した。
「なら、上がっていいよ。蓮のこと、よろしくね。」
そう言い残して高校に続く道を歩いた。
「では、お邪魔します、莉子さん。」