向こうで土方さんが戦っている中、女である私は襲われなかった。


浪士達からしてみれば、『土方の女』くらいにし思われてないんだと思う。


周りを警戒しながら助けを呼ぼうと移動する中、刀のぶつかり合う音は聞こえる。


ガキンッ!!


「死ねぇぇーー!!」


そう言いながらかかってくる浪士達を1人、2人と切り伏せる土方さん。


まさにその姿は修羅だった。


『怖くない』と言ったらうそになるそのセリフ。だけど、その姿に見とれている私もいた。


1人、1番後ろに立っている刀を持ちながら仲間が次々と切り伏せられていく姿を、唖然と見つめてる浪士がいた。


パキッ…


『しまった!!』


その浪士に気を取られていた私は、足元に小枝があるのに気づかずに踏みつけてしまった。


運悪く、小枝が折れた音はその浪士の耳まで届いてしまった。次の瞬間、その浪士はゆっくりとこちらを振り向く。


ニヤッ…


その浪士は、不気味にニヤつきながら近づいた来る。


いくら私が鬼だといっても、平成の世で実戦の経験がまったくと言っていいほどない私は、その浪士の死を覚悟した不気味な殺気に背中が震え、悪寒が全身を駆け巡った。


ゾクッ…


それでも、私が怪我をしてその治癒力の速さから土方さんに鬼だとばれるわけにはいかないので、警戒態勢に入った。


「お前を人質にとれば……」


ブツブツと、そんなことを言いながら近づいてくる浪士。


『考えるんだ…
私が鬼だとバレず、かつ土方さんの足手まといにならなくてすむ方法を…この状況を抜け出せる最善の方法を!!』


「………(ニヤリッ)」


私はコンマ一秒の時間で頭をフル回転させ、今までの経験を生かした最善の策を思いついた。