「今日は太陽に反射して、海が輝いてるよ」
「うん。…宝石みたい」
「あら、ロマンティックねぇ」
「そ、そんなんじゃないよ!」
あたしが何気なく呟いた言葉を聞き逃さずに静子おばぁちゃんは可愛らしく笑った。
歳を忘れさせるような可愛い笑顔。
あたしには一生かかっても出来ないような…笑顔。
あたしは少し俯いて、黙ってしまった。
考え出すととまらなくなる。
あたしには何もない。
何も…できない。
すると、静子おばぁちゃんがポツリと呟くように言葉を発した。
「私は、いつまでこの病院にお世話になるのかしらねぇ」
「……」
あたしは、何も答えなかった。
あたしも、静子おばぁちゃんと同じことを思いながら毎日を過ごすから。
「この身体が病気に耐えられるのはあと半年もない…と言われたからねぇ」
「で、でも…静子おばぁちゃんはそんなに早く…死なないよ」
最後の言葉は、掠れるように呟いた。
自分では死にたいと、ずっと言っているのに。
人にこの言葉を出すのには躊躇してしまう。
ガチャ…
あたしが悶々としていると、ドアの開く音がした。
あたしと静子おばぁちゃんは一緒に振り向いた。
「あらまぁ、太陽じゃないの」
「たいよー…?」
「はよ。ばあちゃん」
ドアを開けてテラスに入ってきたのは、あたしと同い年くらいの少年だった。