「…っ!」


突然の強い風に、あたしは顔をしかめた。
瞑った目をゆっくり開けると、眼前に広がる青い海。
東院立病院で、唯一何にも邪魔されずに綺麗な海が見える場所。
あたしは、ベンチに座る人をみて、近寄りながら声をかけた。


「今日は天気が良いね。静子おばぁちゃん」
「あら花蓮ちゃん。おはよう」
「おはよう」


ベンチに座る人物は朝倉静子さん。
あたしがこの病院に来た後に入院した静子おばぁちゃん。
人と必要以上関わらないあたしに、気軽に話しかけてきてくれて、今では大好きな静子おばぁちゃん。