「さあ、なんでだろうな……。お前を撃とうと狙ってる野郎を見つけたら、いつの間にか勝手に身体が動いてた」
「……な、んで、そのようなことを……!貴方の御命は、私のものなんかよりもずっとずっと貴重なのです!それは副長も分かってーーー
「分かってるさ……」
私の叫びを、彼は穏やかな声で遮る。
「俺を誰だと思ってる……。京の奴らから恐れられた新撰組の、鬼の副長だぞ?誰が死んで、誰が生きれば得になるかなんたぁ、分かってる」
「では、何故……っ!」
私が尚も問い質すと、彼はゴホゴホと咳き込み、緩く微笑む。
その微笑みがあまりにも綺麗でーーー私は彼の命がもうすぐ尽きるのだと悟った。
「そういう理屈抜きにして……俺は、お前を死なせたくなかったんだろう」
「………副長…」
「思えば、お前には本当に世話になったな。芹沢暗殺、池田屋、油小路、そしてこの戦。俺の隣にはいつもお前がいた……」
「そ、んな……当たり前でしょう!?私は貴方に忠誠を誓ったんです!」
貴方と出会った、あの日から……。
貴方の右腕として、貴方の隣に寄り添い、貴方の命だけを受け、貴方に信頼され。
本当に、貴方は私の………。
「土方副長は私の……生きる意味そのものなのです……!」
だから、私を置いて逝かないで下さい……っ!
そう言い涙を流す私の頬に、彼はするりと優しく触れる。
ーーー銃声が響き合う戦場の真ん中で、不思議と此処だけ切り取られた空間のようであった。
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