「お前、俺が朝言ったことさっそく忘れてやがったな・・・」


『うん、忘れた』

兄さんに睨まれるが、気にせずに返事する


「り、莉央!?


兄居たのか!?」

『居たら悪い?』


驚いている三浦を軽くあしらう

そして、ニートの方に歩み寄る


『ちなみにこいつも私の兄・・・


柊真誠“ひいらぎ まこと”よ』


もう、開き直ってこいつのことも教える

兄さんの双子の弟であるニート・・・


双子のクセして、同じなのは顔だけ

思考も性格も正反対



・・・と、いうことを三浦に伝える


「あれ?

でも、名字違うけど・・・何でだ?」

・・・・・・・・・


『それは・・・』


私が口ごもっていると・・・


「“柊”っつーのは父方の姓だ


“新田”は母方の姓なんだよ」


兄さんが助け船を出してくれた


ありがとう・・・兄さん・・・

「つまり・・・莉央のお母さんと柊先生はは莉央を育てながら、この真誠って人を養ってるってわけなんだな!」


「おいお前!

初対面の相手に対してその言い方はなんだよ!


養うってなんだよ!」


「え?

違うんスか?」


三浦とニートが言い合う


少しだけだけど、三浦ナイスとか思った・・・


確かに三浦の言い方はあってる

私はまだ学校行っているから仕方ないらしいけれど、ニートの兄さんは学校に行ってないし、一日中パソコンやってるだけだし・・・


『取りあえず、三浦


部屋行くよ、勉強しなくちゃ』

「お、おう!」


「ま、ままて!

勉強するなら俺も・・・」

「お前は説教だ」



三浦と部屋に行く途中、ニートの悲鳴が家に響いた・・・

「いや、びっくりしたや

莉央、兄貴いるんだな

しかも、柊先生と兄妹とか、スゲービックリしたや」


勉強道具を机に広げながら三浦が私に言ってくる

だからなに?

とか、思うけれど口には出さない


言ったら言ったで面倒なことになりそうだから・・・


『そうね・・・

兄さんに学校では隠しておけと言われていたし、ニートは家から出てこないから知らないのも無理ないわ』

「そっか

莉央には悪いけどあの兄さん・・・残念なイケメンってヤツだな」


『そうね

あんなヤツでも中・高でモテてたらしいから』

私が小学生の時のバレンタインの時なんか家にまで女子が押しかけてたから・・・



『あのニートの話は良いから、勉強するよ

早く部活に戻りたいんでしょ?』

「お、おう!

凛には負けられねえからな!」




なんでそこで宮本が出てくる?



まあ・・・いいか

三浦と真誠こと私の兄(ニート)が対面してから数日がたった


三浦は久々に朝練に出れるって言ってグラウンドに行ってしまっている

そして、私は教室の机の上で手に持った手紙とにらめっこをしていた


朝来たら下駄箱の中に入ってたんだけど・・・


別にラブレターってワケじゃ無いんだよな・・・


だって、手紙を開けたら“挑戦状”って書いてあった


何のこと?


てか、挑戦状ってバカみたい・・・

高1で挑戦状とか小学生の頭脳なのかしら?


紙には今日の放課後に裏庭に来いって書いてあった・・・


・・・小説によくあるヤツかな?


まあ、とりあえず放課後に行ってみるだけ行ってこよう


三浦には先に校門の所に行って貰おう


あの日から毎日結局私の家で勉強してるからね・・・



「おっはよー!

あれ?どうしたの?莉央?」

『おはよう、詩織

何でも無いよ』


詩織が教室に入ってくるのと同時に挑戦状を机の中にしまう


詩織には関係の無いことだしね

放課後になって裏庭に行くと、まだ誰も居なかった


呼び出しておいて、遅いってどういうこと?

・・・帰ろうかな?


とか、思って裏庭から去ろうとすると反対側から女子が数名やって来た


「待たせたわね

新田莉央!」


『ええ、ホントね

呼び出しておいて後から来るなんてあり得ないわ』


その一言に苛ついたのか私を囲むように女子が並ぶ


・・・よくそんなに綺麗に並べるわね・・・・・・


「そのすました顔・・・


ホンット腹が立つわ」

「こんな奴と一緒に居るなんて俊弥君が可哀想・・・」


あんた達の顔の方が可哀想・・・


じゃなくて

『三浦より、あんた達の頭脳の方が可哀想よ


挑戦状にしても、こんな下手な展開にしても・・・よ』

「なんですって!」

「あんたになんか言われたくなんか無いわよ!」


・・・・・・はあ・・・


『ねえ・・・こんなこと言いたい為に私を呼び出したんじゃ無いんでしょ?


だったら早く用件を言って

校門で三浦が待ってると思うから』

「俊弥君を待たせてるですって!?

あんた、何様なのよ!」

「そうよ!」


イヤ・・・

あんた達が呼び出したからだと思うけど・・・


「まあ、いいわ

単刀直入に言わせて貰うわ・・・



これ以上、俊弥君に近づかないでくれる?」

「拒否権なんて無いから!」

・・・・・・・・・


いや、別に・・・私としては構わないけれど・・・

大抵、あっちから来るわけだし・・・

勉強教えないといけないし



と、いうか・・・兄さんに逆らうのが怖いだけなんだけれど・・・


「ま、じっくり考えると良いわ

ただし、明日からは気をつけることね



せいぜい抗いなさい」

「なんだったら、私達三浦俊弥ファンクラブに入れてあげても良いのよ?」


そう言って去って行った通称三浦俊弥ファンクラブ


つーか、あいつファンクラブなんてあったんだ


ちょっと以外・・・



明日から要注意か・・・


兄さんにでも、言っておくか・・・
ー俊弥sideー

昨日の放課後から莉央の様子が少しおかしい・・・

だって、朝学校行けばジャージ着てるし・・・

上履きに画鋲入ってるときだってあったし・・・


最近、勉強教えてくれないから部活に出てるんだけど集中出来ずにボール顔面にぶつけて柊先生に怒られたし・・・


あれ?

最後のヤツは俺の不注意か・・・


『はよーッス

って、また莉央どうしたんだよ!』


またジャージ着て、しかも髪濡れてるじゃねえか!!


「ん?

ああ、三浦?


歩いてたら上から花瓶が降ってきた」


ああ、花瓶か・・・

花瓶なら納得・・・・・・





できねえよ!!


『風邪引くだろ!?

俺のタオル貸すから髪乾かせよ!!』


グイッと莉央の頭を引き寄せて髪を拭く


「ちょっと!

このままで良いの!


三浦!」



莉央が俺を見上げて言うけど、気にしない


だって、風邪引いて欲しくねえし・・・

「三浦!

聞きなさい!このままでいいから放っておきなさい!」

『ダメだ!

今何月だと思ってんだよ!』


「・・・2月」


そう、2月・・・

今日は雪も降って、天気予報は大寒波って言ってたんだぞ!


『風邪引いたらどうすんだよ!』


「そうね・・・いっそのこと風邪・・・引きたいわね


・・・クシュンッ」


・・・・・・

クシュンッ?


『莉央、もうすでに風邪引きかけてんじゃねーか!』

「なんのこと?」



明らかに、ウソついてるじゃねえか!

『やっぱり、保健室に行くぞ!』

「っ!?」


莉央の手を握って連れて行こうとすると顔を歪ませる・・・


そして・・・

「離して!

私は風邪なんか引いていないし、保健室にも行かないわよ」


バシッと手を払って西森達の方に行ってしまった・・・



もしかして・・・俺・・・莉央に嫌われたのか!?


スゲーショックなんだけど!



-凛side-


『ホントに大丈夫なのかよ』

「ええ、大丈夫よ」


ホントかよ・・・

この間からずっと何でかジャージだし、今だって髪が若干濡れてるし・・・


『まっ、大丈夫っつーならいいんだけどよ

風邪は引くなよ』

「引くわけ無いじゃ無い

だって、私風邪引いたこと無い・・・クシュン」


・・・・・・クシュン?

『風邪引いた?』

「引いてない

バカは風邪引かない」

『それ、お前・・・

自分バカですって言ってるようなもんだぞ』


つーか、莉央がバカなら俺や俊弥はどうなるんだよ・・・

風邪じゃ無くて病気か?


なんの病気だよ・・・


そりゃあ、莉央に恋煩いしてるけど・・・つーか、恥ずっ


心の中で思っただけだけど、恥ずかしいわ!!


「・・・どうかしたの?

急に黙り込んだあげく顔赤くして」


『い、イヤ!

何でも無い!』