「・・・」
『・・・』
柊先生と顔を見合わせて
自信ありげな三浦を見る。
「さて、新田?
三浦の点数を言ってみなさい?」
『はい。
三浦さん。
歴史の点数、100点満点中。
・・・5点ですよ?』
それを聞くなり三浦はイスから転げ落ちた。
「俺が・・・5点?
全部、埋めたのに?」
三浦は少し、イヤ。
かなり汗をかいていた。
「あぁ、そうだな。
埋まってたのは凄かった。
だがな!
これを見ろ!
道長は藤原だ!
菅原じゃない!」
最後の方は叫ぶようにして
三浦に答えを言う。
「ウソだろ!
だって、藤原って一文字違いじゃねぇか!
なぁ!新田!」
『一文字違いでも、
全然違いますから』
平然と答える。
「さて、三浦。
気付いたか?
お前は、補習だ。」
柊先生の声が職員室に木霊する。
「で、でも!
歴史だけだろ!?
簡単に終わる!」
『無理ですよ。
三浦さん。』
三浦に全教科のテスト結果の
プリントを押しつける。
プリントには・・・
国語:100点満点中10点
数学:100点満点中83点
英語:100点満点中76点
理科:100点満点中7点
地理:100点満点中21点
歴史:100点満点中5点
と、書かれていた。
少し思う。
この数学と英語以外の異常なまでの
点数の低さはなんでしょうか?
メガネを押し上げて三浦を見ると、
半泣き状態だった。
大丈夫か?
「つー訳で、
三浦に先生を付けることにした。
新田。
後は頼んだ」
『・・・・は?
ちょっと!先生!』
急に言われ
戸惑っている間に柊先生は
職員室から消えていた。
『・・・・ウソ・・・』
呆然としていると
肩に手を置かれた。
ビクッとして振り向くと
三浦に
「どんまい♪」
と、笑顔で言われたので、
少し軽くチョップしておいた。
普段なら騒がしいはずの教室に
無言で入り一番端の自分の席に座る。
生徒は部活に行ったか、
下校したかで、誰もいなかった。
『・・・さて、まずは実力を見るから
このプリントを全部埋めて。』
結果が悲惨だった4教科のプリントを
渡す。
「うげー。
まったくわかんねぇよ」
と、弱音を吐く三浦は放置して、
私は
『終わったら呼んで』
とだけ伝え本を読み始めた。
「俺、今スルーされた?
だー!
まったくわかんねー!」
本も1冊読み終わったが、
いっこうに終わる気は無いようだった
ので、ボーッとしていると、
いつの間にか寝てしまった様で・・・
「おい!
新田!
終わったぞ!」
という三浦の声で目を覚ました。
『ん・・・
やっと・・・?
かして・・・』
三浦からプリントを受け取ると、
自分の髪をポニーでしばり採点をする。
ハァ・・・。
ホント、酷い結果。
採点の終わったプリントを三浦に返す。
「んな!?
15点!?
なんで!?」
・・・・なんでって言いたいのはこっち。
『国語は、漢字は大丈夫。
問題は・・・
登場人物の心情。』
漢字だけはほとんど正解だった。
おそらく、漢字テストだったら
満点は狙えるだろう。
でも、今回のプリントは漢字問題が
少なかったので、低い点数に
なってしまった。
「だって、そーゆーの分かんなくても
良くね?」
良くね?じゃない。
『まぁ、国語は小説を読めば大丈夫よ。
きっと・・・』
「きっとなのか!?」
そう言いながら次の
理科のプリントを見ると・・・
「んぎゃっ!
13点!?
ウソだ!」
ウソつかないわよ・・・。
『理科の方は惜しい問題が多かったわ
・・・でも、なんで
“元素記号を書け”って問題で
“元素名”を書いているの?』
そう、例えば、
石灰水を白く濁らせる気体の記号を
書きなさい。
“A,二酸化炭素”
とか・・・
『植物の方で
“被子植物”と“裸子植物”が逆。
合離花弁って何?』
合弁花類とかはあるけれど・・・
プリントから視線を外し、
三浦の方を見ると・・・
首をかしげていた。
その姿はまるで
“なんで此処がこうなるんだ?”
って、感じの表情をしていた。
『・・・三浦さん・・・
貴方良くこの高校受かりましたね。
理科だけ中学生の範囲に
したのですが・・・』
そう、中学生の範囲の問題を
13点しか取れなかった三浦は
どうやってこの高校に受かったのかが
純粋に気になった。
「ん?
スポーツ推薦と、
徹夜で頑張ったぜ!」
そう言った後
「受験終わった後、
全部忘れたけどな!」
と、続けた。
おいっ。
スポーツ推薦か・・・
確か、サッカー部だっけ?
「つーか、名字呼びやめてくんね?
俺、クラスのヤツからは
名前で呼ばれてぇんだ。」
なっ、頼むよ!
と、いわれるが、
何でかがまったく分からない。
『イヤよ。
そんなことする意味が分からないわ。
あ、これ』
丁度採点終わった地理のプリントを
返す。
すると・・・
「ぎゃっ!
30点!
勘弁してくれよなー!」
勘弁して欲しいのはこっち。
ホントに受験終わった後に
すべて忘れたのかな?
よく、
綺麗さっぱり忘れられるわね・・・