「…あらあら、三篠は相変わらず嫉妬深くて困ったわ」
「い、いいから、小雛の着替えの着物を持ってこい!」
深寿さんは「はいはい」と微笑みながら立ち上がり、部屋へ向かって行った。
急に深寿さんを追い出してどうしたんだろう…?
それに後ろから抱き締めたまま、離してくれない。
「…三篠?あんな追い出し方しなくても……」
三篠の方を向こうとすると、更に強く抱き締められて動けなかった。
「……お前と二人きりになりたかったから」
ドキッ
そんな恥ずかしいことを頬を赤くして言わないでよ。
言われたこっちも顔が熱くなるよ。
三篠の顔を見ていられなくて前を向く。
すると三篠の手が私の手首に触れた。
「…傷は塞がっているな。
少しだけ吸うつもりが、ついたくさん吸ってしまった。
小雛の血を吸った時、身体中が熱くなって止まらなくなっていた……」
自分でも手首の切った部分に触れてみる。
そこに傷口はなく、三篠がキスをして治してくれたのだと分かる。
それに私のこの血は、身体中が熱くなるほどの力があるんだと知った。
鵺姫の血は妖怪の力を覚醒させるとは聞いていたけど、そんなに強い力だったんだ。
でもね?
「…三篠が気にすることじゃない。
私がそうしたかったから、自らを傷つけた。
だからそんなに自分を責めないで?
私はもうピンピンしてるから、平気だよ」
三篠の方を向いてふっと微笑むと、三篠も釣られるように鋭い表情から笑顔に変わった。