「…紅葉が羨ましいよ」




「…え、私が、ですか?」




紅葉の髪をドライヤーで乾かしてあげながら、そんなことを無意識に呟いていた。
紅葉は鏡越しに私を見た。




私は眉を下げて頷いた。




「…私も鵺姫の力を覚醒しかけてて、三篠の力になれるんだって思ってたけど、三篠は一人で何でも解決しようとしてるでしょ?
私には心配かけないように何も言わないし。それなのに紅葉には話している。
ただちょっと私にも話して欲しいなって思ったの」




これじゃあ、ただの嫉妬だと思うかもしれない。




でも三篠のことが心配なのは事実だし、頼って欲しいのも事実。




すると紅葉はフッと笑った。




「…確かに私は三篠様が何を無理なさっているのか知っています。
でも知っているだけで、私には助けを求めてこないのです。
それにそのことを小雛様に言うことも出来ない。




ですが、小雛様は違います。
小雛様は三篠様の誰よりも近くにいて、三篠様の疲れた心を傷を癒すことが出来ます。
私にはそれが出来ない。だから小雛様を羨ましく思います。
私にしか出来ないことがあるように、小雛様にしか出来ないこともあるのです」




私の方を向いてニコッと笑う紅葉。




私にしか出来ないこと……
そっか、私には三篠の傷を隣で癒すことが出来るんだ。




鵺姫だから出来ることもあるし、人間だから出来ることもある。