そのためには…………
「…随分と難しそうな顔をしてるわね、三篠?」
考え事をしていて、近くにいたのに気付かなかった。
奴は花を持って、柔らかな笑みを浮かべる。
「…深寿(みじゅ)か。そんなに難しそうな顔をしてたか?」
深寿は頷く代わりにニコッと笑い、かすみ草の花を花瓶に飾った。
「…えぇ、それはもう。三篠がそんなに難しそうな顔をしてるのは、鵺姫様のことを考える時以外ないもの」
ったく、こいつには何でもお見通しって訳か。
花瓶に花を飾ると、深寿は俺の斜め後ろに腰を下ろした。
「それで、混妖の国を治める王様が鵺姫様の何をお悩みなんですか?」
態とらしく敬語で話しかけてくる、深寿。
俺と小雛のことをからかいやがって。
とか思いつつも、深寿には悩みを打ち明けた。
「…小雛は自身をまだ鵺姫だと信じていない。
早く自覚させないと、いつかあのお守りを外して街を歩いてしまう。
そうなると小雛は妖怪に喰い殺される」
いつも想像してしまう。
お守りを外して街を歩く。
すると大量の妖怪が小雛を押し倒し、白い肌に噛みつく。
「…小雛の肌に触れていいのは俺だけなのに……!」
「…み、三篠?若干ズレてるわよ?」