全部……全部…




「…全部、アタシのせいじゃないか…!」




膝から崩れ落ちる。
混妖として生まれてきたことを呪い、悔しくて両手で土を握る。




トン




土を力強く握る両手の上に、手が乗せられた。




顔を上げれば、海似と紅葉がそれぞれ片手ずつアタシの手に手を重ねていた。




「…全てを自分のせいにしないで。この争いは瑠璃葉のせいじゃない。
三篠様がきっと助けてくださる。だからここで諦めないで」




海似が微笑み、アタシの目から零れる涙を拭ってくれる。




「そうですよ、母様。
まだ黒兎に負けたわけではありませぬ!
琴葉様達も必死に戦っております。
戦わずして諦めてどうするのです!」




紅葉はさっきとは違うキリッとした表情で笑った。




…そうだね、二人の言う通りだ。




まだ戦いは終わってないじゃないか。
これから始まるんじゃないか。




それなのにこんなところで勝手に自分のせいにして諦めて、アタシはこんなに弱くないだろ?




いつまでも地べたに膝をついてるアタシじゃない。




立って、自分の脚で、国を救いに行くんだ。




混妖であるアタシを救ってくれたあいつ等を、今度はアタシが助けるんだ。




着物の袖で涙を拭い、立ち上がる。




そしてその脚で真っ直ぐに三篠様の屋敷に向かう。




みんながいるであろう大広間の襖を思いっきり開ける。




すると揃っていた六臣と三篠様が目を見開いて一斉にこっちを見た。





「…行くよ、混妖達(アタシら)の強さを純妖共(あいつら)に見せてやるんだ」




アタシがそう言えば、三篠様がふっと笑って一番最初に腰を上げた。




「…こんなところでウダウダ考えてる余裕はない。
あいつらの思い通りにはさせない、行くぞ胡蝶ノ国に」


「「「「「はい…!」」」」」




三篠様の声に、アタシ以外の六臣が一斉に立ち上がった。




みんながアタシの国を助けようと立ち上がってくれた。
アタシはその想いだけで、涙が出そうになった。




「…泣くのはまだ早い。
国を助けてから思いっきり泣け」




アタシの横を通り過ぎる時、三篠様が小声で呟きアタシの肩に手を置いた。




アタシは首を振って涙を振り払う。




三篠様の言う通りだね。
今は泣く時じゃない。




泣くのはアタシの家族が助かった時。




待ってて母様、菊葉、蜜葉…そしてみんな。




今から助けに行くから。
だから絶っ対に死ぬんじゃないよ…!




【side end】