「…三篠!胡蝶ノ国が…!琴葉さん達が…!」


「…大丈夫だ。大丈夫だから、落ち着いて話せ」




とにかくこの目で見た事実を伝えようとしたけど、言葉がうまくまとまらなかった。




そんな私を三篠は背中をさすって落ち着かせてくれた。




私は目を閉じ深呼吸をしてなんとか落ち着かせると、また三篠を見た。




「さっき千里眼で見えたの。
胡蝶ノ国が妖達に襲われているのを…!
今、琴葉さん達が戦ってる。遊郭も炎に包まれてた」


「なん、だと…!?」




私の背中をさする三篠の手は止まり、三篠も信じられないというように目を見開いている。




すると慌てて階段を上ってくる足音が聞こえた。
そしてノックもなしに入ってきたのは、桔梗さんだった。




「…三篠様!姫様!
ただ今、黒兎の部下と思われる二体の鬼を筆頭に、胡蝶ノ国を襲撃しているとのこと。
琴葉様や菊葉様、蜜葉達が戦ってるとのことです!今すぐ救援が欲しいと胡蝶ノ国より救援要請が…!」


「…分かった、六臣を集めろ。小雛、お前も着替えてから来い」


「…うん、分かった」




三篠は桔梗さんの状況説明を着替えながら聞いていた。
私は布団に入ったまま三篠の言葉に返事をして、しばらくそこから動くことができなかった。




見たものは夢だって信じたかった。




でも桔梗さんの慌て方、三篠の冷静な対応。
それが本当のことだと知らしめる。




千里眼で見た状況が本当なら、胡蝶ノ国が危ない。
早く助けに行かないと、このままだとみんな死んでしまう。




なのに足が竦んで動けない。
早く、早く行かないといけないのに。




手が震えて、力が入らない。



呼吸が、苦しい。




「…小雛様、大丈夫ですから落ち着いてください」


「…みじゅ、さん…?」




いつの間にか隣に来て、私の手を握ってくれたのは深寿さんだった。




深寿さんの優しい温もりに、手の震えが収まって呼吸も安定してきた。




私が落ち着いたのを見て、深寿さんはふっと笑った。




「…ゆっくりでいいですから、着替えましょう。わたくしもお手伝い致します」




深寿さんの優しい声に私は言葉が出ず、ただコクリと頷いた。




そして服に着替えながら願ったのは、どうか琴葉さん達の無事。
ただそれだけだったーーーーーー