この日の夜はいつもとは違った。
いつも私が三篠に抱き締められて眠るのに、今日は三篠が私に抱き締められるような体勢で眠った。
だから人生で初めて、腕枕をする側を経験した。
いつも三篠は重い頭を支えてくれてたんだと、申し訳なさを感じた。
そして甘えるように私の胸に顔を擦り寄せて眠る三篠の頬には、涙の跡があった。
私は涙を拭うように涙の跡に触れ、目を閉じた。
いつもと寝る体勢が違うからなのか、誰かの過去のような夢を見た。
白髪の少女が男性に手を引かれ、笑顔で歩いている夢。
その少女の顔や体にはたくさんの傷があったけど、少女は幸せそうに笑っていた。
きっとそれは隣にいる男性の影響なんだと、見ていてすぐに分かった。
少女は男性のことが大好きで、男性もまた少女のことを愛おしそうな瞳で見つめていた。
互いに互いを大切に想い合っているようだった。
私もいつか、この二人のようになるのかな?なぜかそんなことを思った。
そう思った時、いきなり場面が切り替わった。
次に映し出されたのは、この前行った胡蝶ノ国だった。
でもその胡蝶ノ国に妖達が襲ってきていて、遊郭は炎で燃えていた。
これは…夢じゃない?
遊女の方達の悲鳴や叫び声が現実味を帯びている。
それに目の辺りが燃えるように熱い。
もしかして千里眼が発動しているのかも……
もう少しよく見てみると、琴葉さんが誰かと戦っていた。
状況は琴葉さんの方が劣勢で、このままだと危ないという状態。
なんで妖達は胡蝶ノ国を襲っているの……?
その答えは見つからなかったけど、今起きているであろう悲劇に勢いよく目を開けて飛び起きた。
「……ゔっ…」
飛び起きると力を使い過ぎたのか、頭痛がした。
今日は私が腕枕をしていたから、腕を思いきりどかしたせいで三篠の目を覚ましてしまった。
「…おはよう、こひ……小雛!?」
寝ぼけていた三篠は私が頭を押さえている姿を見て、一気に覚醒した。
三篠は私の腰を支え、ゆっくりと寝かせてくれた。
でも今は寝ているどころじゃなかった。