敵となった肉親を殺して、自分の望んだ世界を自分で切り開いていく。
こんなのって…残酷すぎる。
「…これは運命なんですよ」
「……うん、めい…?」
手をギュッと握って俯いていると、桔梗さんの声が聞こえた。
顔をゆっくりと上げると、桔梗さんは目を閉じていた。
「…肉親で意見が合わなければ、自らの考えを叶えようと肉親で争う。
どちらかが死ぬまでずっと。ここはそんな世界です。
意見が考えが食い違ったら最後、必然的に戦うことになります。
三篠様が純妖と混妖が平和に暮らせる世界を望み、黒兎が全ての混妖を消し純妖だけの世界を望んだ瞬間、戦う運命がやってきた。ただそれだけなんです。
それでも尚、話し合おうとした三篠様はただ甘いということですね」
三篠のことを思い出しているのか、桔梗さんはふっと笑った。
でも目を開けた桔梗さんの表情は、また鋭くなっていた。
「先に言っておきます、姫様。
三篠様は昔は黒兎と戦うつもりはなかった。でも今は本気で戦い、この世界を変えようとしている。
ですから敵を助けるという考えなど、お捨てください」
私の先の考えを読まれたような感覚に陥った。
桔梗さんはこの先、私なら敵である黒兎を助けようとするかもしれないと思ったんだ。
「三篠様と黒兎はいずれ戦う運命にあった。
この戦いは、どちらかが死ぬまで続く。
ということは…分かりますね?」
分かりたくなかった。
でも、分かってしまった。
この戦いは、どちらかが死ぬまで続く。
自分の大切な人を失くしたくないのなら、相手が死ぬまで戦え。
相手に情けをかけるな。
「…あなたが何故人間として生きる道ではなく、人間を捨て鵺姫として生きる道を選んだのか、そのお考えを常に頭の隅に置いて忘れないでください」