座布団に座ってからも、沈黙が続いた。
私は桔梗さんが話すのをジッと待つように、太腿の上に置く手をギュッと握った。
そしていきなり話し出した桔梗さんの口から、驚くべき真実が私の耳に入ってきた。
「…現妖王・黒兎は、三篠様の腹違いの兄です」
「……え…」
桔梗さんの言ったことが信じられなかった。
黒兎と三篠は異母兄弟ってこと……?
じゃあ、三篠は自分のお兄さんを殺そうとしているの…?
「琴葉様は、肉親同士で殺し合うことが好きではないお方。
それ故に三篠様に戦うことを反対なさっていたんです。
実際、我々に味方してくださっていますが、その理由は恐らく三篠様のところに瑠璃葉がいるからだと私は考えています」
桔梗さんの考えには納得できた。
琴葉さんがもし三篠ではなく黒兎側についていたのなら、三篠と戦わくてはならなくなる。
それはつまり、三篠の臣下である瑠璃葉と戦うということ。
肉親同士で戦うなんて、私だって嫌だ。
でもどうして三篠は……
「…どうして三篠は兄である黒兎と戦わなくちゃいけないんですか?
戦う以外に道はないんですか…!?」
…そうだ。
他に道はたくさんある。
私が人間として生きるか、人間をやめて鵺姫として生きるかという選択肢があったように。
三篠にだって選ぶ道はあるはずだ。
私がそう言っても、桔梗さんの表情は鋭いままだった。
「…三篠様も最初は黒兎と戦う気はありませんでした。
何度も何度も話し合おうとしましたよ。でもあちらは聞く耳すら持たなかった。
それよりもあちらは我々に刃先を向け、我々を殺そうとしたんです。
あなたは肉親に刃先を向けられても尚、話し合いの道を選びますか?」
「………」
何も言えなかった。
私がもし家族に刃先を向けられたら、きっと説得させようと戦うと思ったから。
悲しみに涙を流しつつも、自分の望んだ世界のために戦う。
三篠もこんな気持ちで黒兎と戦っているの…?