「…琴葉。貴重な情報感謝する」


「礼なんていいさ。
いつもしてることじゃないか。今更礼を言うなんておかしな奴だね、アンタは」




三篠がお礼を言ってむず痒いのか、琴葉さんは肩をすくめて笑った。




桔梗さんは遊女の方達に引っ付かれて、離すのに苦労している。




「じゃあ、またあっちに行くけど母様のこと頼んだよ?菊葉」


「任せて!姉様が戻ってこなくてもいいように、私頑張るから!」




菊葉ちゃんは自信満々な表情で胸に手を当てた。
それを見た瑠璃葉は安心したように笑ったけど、やっぱり心配なのか蜜葉に菊葉ちゃんのことを頼んでいた。





なんか二人とも似てるなと感じる一面だった。




「……み、三篠!」




火車の神楽に乗ろうとすると、琴葉さんが三篠を呼び止めた。
私は乗ろうとした足を止め、三篠と琴葉さんを見た。




琴葉さんはなんだか浮かない表情をして、三篠を見ていた。




「…三篠、本当に黒兎と戦うのかい?」


「……あぁ、そのつもりだ」


「だ、だって黒兎はアンタの……!」




琴葉さんは何かを言いかけて止めた。
三篠の背中しか見えないけど、三篠が冷たい殺気を放っていることが分かった。




「…琴葉、戦わせたくないのは分かる。
だがこれは俺が決めたことだ。
相手が黒兎だろうと、混妖を消そうとしてる奴は倒すだけだ。


もし琴葉がそれを阻止しようと黒兎の見方をするようなら、俺は容赦しない」




いつもの声音とは一段と低い、三篠の声。




その有無を言わせない声音は、琴葉さんをあっさりと黙らせてしまう。




三篠と今の妖王には一体何があるの……?




琴葉さんがあんな悲しそうな表情をして必死に止めようとしてた。
これはきっと戦わせたくない、悲しい理由があるんだ。




三篠もかなり冷たかった。
それに琴葉さんが止めるようなら容赦しないって…




ねぇ、三篠。
あなたは一体どんな苦しみを背負っているの?




聞きたいけど聞けずに、私は三篠が振り返る前に火車に乗り込んだ。