「…私は捨て子だったんだ。
遊女にはよくあるでしょ?望まずして子を孕むことなんて。
私はその中の一人だった。物心ついた時から一人で生きてきた。死にたいなんて何百回も思った。


そんな時に瑠璃葉に出会った」




『アンタ、独りなのかい?だったらアタシについてきな』




「…私が頷く前に瑠璃葉は私の手を引いて、琴葉様のところに私を連れて行った。
遊郭でひっそりと生きていた私が長の琴葉様に会う日が来るなんて、思わなかったなー」




『瑠璃葉、その子は誰だい?
……へぇ、捨て子ね。アンタ顔に傷があるけど、なかなかにいい面してるじゃないか。アタシの元で働きな』


『母様、この子名前がないらしいんだ。
つけてやっておくれ!』


『えぇ!?名前がないのかい!?
瑠璃葉、それを早く言っとくれよ!
名前、名前……そうだねぇ〜』




「…それで蜜葉って名前を琴葉さんから……?」




蜜葉は優しい笑みを浮かべてコクリと頷いた。




蜜葉にはそんな過去があったんだ。
みんなそれぞれ色んな過去を背負ってるんだね。




蜜葉は下から遊女の方達に呼ばれ、手を振っている。




「…だから私は決めたんだ。
この命は全て琴葉様を護るために捧げようと。
それで私はこの暗部の道を選んだ。




今思うと、この道を選んで良かったって心の底から思うよ」




蜜葉の初めて見た笑顔はすごく晴れ晴れしてて、曇り一つない笑顔だった。




私は蜜葉に頑張ってという思いを込めて、蜜葉の手を握った。
蜜葉は照れていたけど、握り返してくれた。




「姫様ぁ〜!そろそろ帰るよ!」




キリのいいところで瑠璃葉が私を呼ぶ声が聞こえ、私は蜜葉と一緒に戻った。