しばらく何も話さずに、二人で沈みかけの夕陽を眺める。
海似さんと話してる時の瑠璃葉、すごく楽しそうだった。
三篠達の前ではみんなをまとめるお姉さん。
子供達の前では面倒見のいいお母さん。
でも海似さんの前だと可愛い一人の女性になる。
誰の前でも見せないその表情は、恋してる女の子って感じだった。
海似さんは純妖の長の地位を捨てて、瑠璃葉と夫婦になったって言ってた。
それは言葉では簡単に言えるけど、かなり険しい道だったはず。
それでも二人は『今が一番幸せ』と言ってた。
すごく、いいなと思った。
私も二人みたいに今が一番幸せだって言えるようになれるかな?
「…ねぇ、三篠」
「…ん?なんだ?」
三篠を呼べば、三篠は優しく微笑んで答えてくれる。
それだけでも幸せだと思ってしまう。
「…私達もなれるかな?瑠璃葉と海似さんみたいな夫婦に」
夫婦、なんて考えるのはまだ早いかもしれない。
でも私は三篠と結ばれる道を選んだから、いずれはこうなるということ。
三篠は一瞬だけ目を見開いたけど、やがて微笑むと私の肩に頭を乗せた。
「…俺達の道は瑠璃葉と海似よりも険しいと思う。
でも幸せになれない道なんて選ばない。
ちょー幸せな未来を選んで、あいつらよりも幸せになってやろう」
心の中に染み込んでくる、三篠の言葉。
すうっと染み込んで、心が暖かくなる。
これが幸せってことなのかな?
幸せな未来は、こんな幸せがずっと続くってことだよね。
三篠の頭に自分の頭をくっつけて、寄り添う。
こんな日々がずっと続けばいいのに。
小雛のこの願いはすぐには叶わなかった。
この幸せなひと時から、悲劇は始まろうとしていた。