人間界でいう兄妹での結婚が禁断なら、妖界(ここ)は純妖と混妖の結婚がある意味禁断なんじゃないのか。




私の言葉に核心をつかれたのか、海似さんは困ったように眉をハの字にして笑った。




「…私は本来なら純妖の大蛇の長になる予定でした。実の妹と婚約までしていました。
ですが私は瑠璃葉以外と一緒になるつもりは、はなからありませんでした。


昔から気が強くて言いたいことを言え誰よりも優しい、そんな瑠璃葉を愛していましたから。
だから私は大蛇の長となることを捨て、瑠璃葉と一緒になることを選んだ。もちろん一族には反対されましたが、そこを三篠様に救っていただいたのです」




自分の足元を見つめる海似さんの目は温かいけど、とても強かった。




長になることを捨てて瑠璃葉を選んだってことは、駆け落ちってことだよね。




これもある意味の禁断だと思うと、私までも顔が熱くなる。




「…ちょ、海似!?
あ、愛してるだなんてそんなこと簡単に言わないでおくれよ!」


「え?僕は当たり前のことを言っただけだけど?」




耳まで真っ赤にした瑠璃葉を、海似さんはからかうように笑っている。




純妖の長になるということは、一族の中で一番強く、長というのはその勲章のようなものだと桔梗さんから教わった。




そんな勲章を自ら捨ててまで、海似さんはこっちの道を選んだ。




「…海似さんはこうなったことを、後悔していませんか?」


「……っ!」




瑠璃葉の前で後悔してないかなんて聞くのは失礼かもしれない。
でも聞かずにはいられなかった。




海似さんは目を見開いて驚いていたけど、やがていつものようにふっと笑った。




「…長になる道を選んでいたら、きっと後悔していましたよ。
今は全くその気持ちはありません、むしろ今が一番幸せです」


「……〜〜〜〜っ!」


「…ひ、姫様?」




どうやら今の言葉は瑠璃葉に聞こえないように言ったらしい。
私が真っ赤になった顔を手で隠しその場に寝そべると、瑠璃葉は首を傾げていた。




なんだろう。
好きとか愛してるとかそんな甘い言葉を海似さんは言ったわけじゃないのに、今の言葉はすごく甘い気がした。




私はこの照れを言葉に出来なくて、とにかく足をバタバタさせた。




海似さんって瑠璃葉にはこんなに甘いんだ。
なんだかこっちまでお腹いっぱいになったよ。