「…何度言えば分かる。
俺は人間としてのお前を愛していると。
出来損ないの鵺姫?だからどうした。
愛していない鵺姫を妻にするくらいなら、俺は心から愛する人間のお前を妻にする。
妖王は鵺姫を妻にしなければならないなんてことは、俺が変えてやる」




…なんだろう、この奥底から湧き上がる感情は。




名前を付けるなら、これが『愛』なのかな。




これで分かったか、と言うように三篠は私を見つめてくる。




私の『愛』という気持ちが溢れてくるように、私の目からは涙が溢れてきた。




私……私は………




「…ずっと三篠の……隣にいたい……っ
鵺姫でも……人間でなくても……ずっと三篠と……っ、いたい……!」




やっと喉を詰まらせていた結論が口から吐き出た。
今までの頭のモヤモヤがスッと消えていく。




もう答えはとっくに出てた。
でも怖くて言えなかったから、答えには鍵がかかってしまった。




それをこじ開けてくれたのは紛れもなく三篠、あなたなんだよ。




三篠はふっと笑って、止まることのない涙を親指で拭ってくれる。




「…お前が人間でなくなったとしても鵺姫でなくなったとしても、俺の妻にすることに変わりはない。
お前がもし自我を失って暴走したのなら、俺のもてる全ての力で止める。絶対に殺しはしない」




お前のいない世界など、俺の目指す世界じゃないからな。




三篠はこういう時にかっこいいことをサラッと言ってしまうから、嫌。




アッサリと私を安心させてしまうから、嫌。




でもそれが好き、大好きなんだ。




残りの涙をパジャマの袖で拭い、「もう心配ないよ」という笑顔を三篠に見せる。




三篠は少し驚いていたけど、やがて眉をハの字にして笑った。
そして私を優しく、今度は正面から抱き締めてくれた。




いつの間にか起きていた紅葉は号泣していた。




私の生きる道は決まった。
あとは明日、お母さんに言うだけ。