「……ハッ!も、申し訳ございません。ついベラベラと余計なことまで…!
私の過去のことなどどうでもいいことでございました…!」
話し終わった紅葉は恥ずかしそうに頬を赤くして、俯いた。
私は首を横に振って、紅葉の頭に手を置いた。
「どうでもいいことじゃないよ?
紅葉が真剣に話してくれたおかげで、なんだか選べそうな気がしてきた。
辛い昔のことを話してくれてありがとう」
昨日から笑えていなかったけど、今やっと笑えた。
紅葉は涙目になって、「小雛しゃま~!!」と飛びついてきた。
私は子供をあやすように、紅葉の背中をポンポンと叩いた。
私の決断はまだ決まっていなかったけど、紅葉の話を聞いてモヤモヤした気持ちはどこかにいってしまった。
神社の掃き掃除を終わらせ、私はある人を探して家の中を歩いていた。
紅葉ももちろん、私の後をついてくる。
家のあちこちを探してもいなかったからもしかしたらと思って、神社の本殿に顔を出す。
すると本殿の中に探していた人が、正座をして手を合わせていた。
「……やっぱりここにいたんだね、おじいちゃん」
声をかけると、おじいちゃんはチラッと私を見てからまた目を閉じた。
「…神聖なるところに妖怪なぞ連れてきおって」
おじいちゃんの深いため息が本殿内に響いた。
やっぱりおじいちゃんにも紅葉の姿が見えるんだ。
私は紅葉をチラッと見てから、またおじいちゃんの背中を見た。