「……小雛様…」
顔を上げると、紅葉が心配そうに眉をハの字にしてこっちを見つめていた。
昨日話を聞いてから私の調子はこんな感じだから、紅葉もこんな感じで私を見てくる。
私のせいで紅葉も元気がなくなってる。
「…ごめんね。私がこんなんなってるせいで、紅葉までも巻き込んじゃって……」
紅葉の気分が少しでも和らぐように、紅葉の頭を優しく撫でる。
こんな風に頭を撫でたって、私が笑ってなきゃ意味ないよね。
紅葉は力強く首を横に振った。
「お気になさらないで下さい。あんなことを言われれば誰でも気分を害します。私はこんなにも小雛様の近くにいるのに、何も出来ないのが悔しいのです」
「……紅葉…」
三篠はこんなにいい臣下を持って、幸せ者だな。
ありがとうという思いを込めて、紅葉の耳を撫でた。
紅葉は気持ちよさそうに目を閉じている。
それから私と紅葉は休憩として神社の本殿前の階段に座った。
「…ねぇ。もし紅葉が昨日私が言われたみたいに、どっちかを選ばなきゃいけない時があったらどうする?」
ほんとは自分の道は自分で決めるべきなんだろうけど、このままじゃ決まりそうにないから。
紅葉は自分に聞かれると思わなかったのか、目を見開いてパチパチと何回もまばたきをしていた。
そして足元を見てしばらく考え、空を見上げた。