でももし私が今の妖王に会って、血を飲まれたら?
それで妖王が力を覚醒させてしまったら?
私は三篠とは結ばれないの?
今の妖王のものになってしまうの?
そんな不安が私の中を駆け巡った。
すると三篠に肩を抱かれて引き寄せられた。
「…覚醒出来ないとしても、俺はお前を妖王に渡す気はない。
何としても覚醒して、お前と共にこの世界を作り変えると決めているんだ」
「……三篠」
三篠の声は私の不安を溶かしていく。
この声だけで、この先の不安も消えてしまいそうなほど。
自信に満ちた三篠の表情に、お母さんは安心したように微笑んだ。
「…さて、この話はこれくらいにして」
お母さんは区切りをつけるように手を叩いた。
そして続きを促すように、私を見つめてきた。
私は狂愛ノ書の続きをめくった。
10、鵺姫、血ヲ与エテモ姿変ワラヌガ、妖王ニ肉ヲ与エレバ、人間デモ妖怪デモナラザル者トナル。
11、鵺姫ガ何者デアルカ、決メルハ妖王ノ狂愛ニヨル。
12、ココニ書カレタコトハ鵺姫ノ運命デアリ、コノ運命ハ、必然ナリ。
私の未来の姿は後半に記されていた。
でもその運命は信じられなかった。
鵺姫は肉を与えると、人間でも妖怪でもないものになる……?
じゃあ、私が三篠に肉を与えたら何者でもなくなってしまうってこと……?
分かっていても分かりたくなくて、お母さんを見た。
お母さんは冷静に目を閉じた。