「…楽しそうって……私はただ混妖を消し去る話をしてたんだよ?」
「だからその話が面白そうだったんだってぇ〜!」
少女はクルクル回って、肘掛けに座って脚を組んだ。
「混妖を消すってことは、殺し合うってことでしょぉ〜?そんなの面白いに決まってるよぉ〜」
フードからは少女の口角が上がったのが見えた。
彼女は殺し合うことを望んでいるようだった。
黒兎は困ったように笑っていたが、殺し合うということに否定的な態度はとらなかった。
むしろ何かを思いついたのか、白い歯を見せてニヤリと笑う。
「そんなに殺し合いがしたいのなら、君達にいい仕事を与えようか」
黒兎の言葉に少女は「やったー!」と両腕を挙げて喜んだ。
一方男は「…君達って…一緒にしないでくださいよ」とため息をついた。
「私を裏切るとどうなるか、そろそろ思い知らせてあげないといけないからね?
君にも協力してもらうよ、冷樹?」
「…あっれぇ〜?まだそこにいたんだぁ〜?」
少女は腕を頭の後ろで組み、下を見下ろす。
黒兎に呼ばれた冷樹は暗闇から姿を現した。
どうやらあの時去らずに残っていたようだ。
冷樹は先程のように片膝をつき、黒兎に頭を下げた。
黒兎は椅子から立ち上がり、両手を広げた。
「…さぁ、新たな世界の幕開けといこうか」
(そのために君には苦しんでもらうよ?三篠…)
黒兎は心の中で三篠の名を呼んだ。
小雛が鵺姫として自覚し、力を覚醒させたことでこの戦いは幕開けとなった。
この戦いは勝つか負けるかではない。
生きるか死ぬかの戦いである。
三篠は鵺姫を守り抜き、妖王となることが出来るのか?
それとも鵺姫は黒兎のものとなり、三篠が滅びるのか?
戦いの幕は上がった。