小雛と三篠が共に眠りについた頃ーーー
闇の深まる妖王の城では純妖の長達が集まり、話をしていた。
「…皆さんはお聞きになりまして?鵺姫が混妖の王の手に渡ったと」
黒い布に紅い蜘蛛の模様が入った着物を、胸の谷間が見えるほどに着崩した妖艶な女郎蜘蛛(じょろうぐも)の長・朱綺(しゅき)は長い爪を眺めながら尋ねた。
その言葉を合図に、他の純妖達が暗闇から現れた。
「そのことを聞いていなければ、ここには来ていない」
朱綺の質問に一番最初に答えたのは、クリーム色の髪を三つ編みに束ねた鎌鼬の長・金蘭(きんらん)だった。
金蘭は冷めた視線を朱綺に送ると、すぐに目を閉じ近くの柱に寄りかかった。
朱綺は金蘭の言葉に「それもそうですわね」とクスリと笑い、腕を組んだ。
「…アタシは知ってても来る気はなかったけどね」
「あなたは戦いは好きじゃありませんものねぇ?琴葉」
朱綺は蝋燭の灯りに照らされる紅い目を、焦げ茶の長い髪を簪(かんざし)でまとめてる毛倡妓の長・琴葉(ことは)に向けた。
琴葉は朱綺の目線に一瞬だけ怯むが、次にはまた平然としていた。
「…にしても妖王と結ばれる運命にある鵺姫が違う王を選ぶなんて、あり得るのかい?」
琴葉は深くため息をついた。
朱綺は人差し指を軽く顎に当てて、少し考えている。