深寿さんは私から離れると、何かを思いついたのか手を叩いた。
「では小雛様と呼ばせていただく記念として、わたくしの知ってる三篠の小さい頃のお話をいたしましょう」
三篠の小さい頃…
三篠からも聞いたことなかったから、気になるかも。
聴く気満々で深寿さんを見ると、深寿さんは面白かったのかクスッと笑った。
「…三篠はあの姿からは想像も出来ないほどに真面目な子でした。
毎日己に厳しく言いつけるようにして修行に励み、怪我をしない日なんてありませんでしたわ」
深寿さんは懐かしむような目つきで夜空を見上げる。
確かに三篠の外見だけだと、フラフラしてて修行とは無縁そうだよね。
「三篠と出会ったばかりの頃のわたくしには理解出来ませんでした。
毎日森で倒れるほどに修行をする理由が。
ある日三篠に聞いてみましたの。どうしてそこまで厳しい修行をしているのかと」
そしたらなんと答えたと思います?
深寿さんはそう言って微笑み、私を見た。
なんで私を見たのか分からなかったし、答えも分からなかった私は首を傾げた。
それを見た深寿さんはフフッと笑った。
「…全ては貴方のためだと言っておりましたよ、小雛様」
「……私の…ため……?」
私が言葉を繰り返すと、深寿さんはコクリと頷いた。