「別にいいんですよ。私、本当は手を挙げようと思ってたんですけど、タイミング逃しちゃって・・・。推薦してくれてよかったです」

渡部さん・・・なんていい人なの。

「いや、騙されるなよ浅野。本当はやりたくなかったんだこいつ。そうに決まってる」

足立くん・・・素直に安心させて。
ていうか、なんでちょっと渡部さんが悪い人っぽい感じになってるの。

「まあとにかく、私が押し付けた感じになったのはごめんね。私、ちょくちょく手伝うようにするから入り用になったら声かけてよ」
「ありがとうございます」
「浅野、悪いと思ってるなら声をかけられる前に動け」
「すみません言われなくても手伝うので渡部さんはゆっくりしていてください」
「それだけか」
「お茶も淹れます」
「実里くん、浅野さんをいじめないでください。また友達できなくなりますよ、私たち」

渡部さんが足立くんにそう訴えた。
なんだか気にかかる言葉だ。
ていうか、私はこの仲よしそうな二人組に混じって昼食を摂る体なんだけど、いいんだろうか。
それを口に出すと、渡部さんが泣きそうな顔をした。

「待ってください、何でもしますからお昼一緒に食べましょう」
「なんでいきなり下手に・・・」
「友達が出来るチャンスをふいにするなんて、人間として終わってます」
「そ、そうなの?まあ、そう言う事ならご一緒させてもらうけど・・・二人って、付き合ってるのではなく?」

私が尋ねると、教室中の目線が心なしか私たちに集まった気がした。
みんな、興味があるのだ。
会話する声がさあっと引いていく。
みんな、露骨!
二人は、周囲の変化には気づいていなさそうな様子で、揃ってきょとんとした顔をした。

「ない」
「ないです」
「あっ、そうなんだー」

次の瞬間、喧噪がよみがえった。
みんな・・・・露骨!