「いえーい、決まりー!先生先生、全員決まったー!」
「あーよかった!時間ぎりぎり!浅野さん書けた?」
「バッチリです」
「キャーありがとう!!」

私は力なく浜地先生にプリントを渡した。
私自身の名は図書委員の欄に記入されている。

だって、拒否する雰囲気じゃなかった。
推薦じゃなくて指名だったし。
なんか足立くんの迫力とクラス一同の雰囲気に負けた。
委員長推薦のときに一役買ってしまったのがまずかったのかもしれない。

おずおずと後ろを振り返ってみる。
今は昼休みだ。足立くんは弁当の包みをするすると解いている。誰かと食べる気は無さそうだ。

「つ、つかぬことをお聞きしますが・・・」

私は、自分の食料を胸に抱いたまま彼に声をかけた。
彼は、ゆっくりと私の方を見た。
葉っぱにテントウムシか何かが止まっているのを見ているような目つきだ。
おや、何かいるぞ。
そんな声が聞こえてきそう。

「なにゆえ、私を委員に指名したわけで・・・?」
「ああ、何となく」
「何となく?」
「おまえ、由美を推薦しただろ。なんかあまりにも押し付けがましかったから、逆にやってやったらどんな反応するかと思って」
「・・・・」
「じゃあやりまーす、とか普通に言ってんなよ。つまんね」
「す、すみません・・・」

畏縮するしかない。
ていうか、足立くんは渡部さんと仲がよろしい感じだったのか。
大変、よろしい感じだったのか。

「あの、実里くん。一緒に食べませんか」
「わ、渡部さんごめんごめんごめん!」
「え・・・?」

弁当を持ってやってきた渡部さんの姿を見て、私は反射的に頭を下げた。
渡部さんは、意味が分からなさそうに小首をかしげた。