歩きながら香織は思った
不幸ってこんなことをいうんだろうな
世界中の誰よりも、自分は不幸だと思った

あの男の子に会いたいな

そう衝動的に思った香織は、あの森に駆けた
学校なんてサボったことのない香織だった
それはお母さんが厳しいせいもある

だから初めての非行に、心臓バクバクさせながら駆けた
どこまでも、駆けた



森には誰も居なかった
「あれ?」

必死に探した
あの男の子はいないか…
必死に、必死に探した

「ふふふ」

え?誰かいる
それは紛れも無くあの男の子の笑い声だ
香織は声を聞いただけだが、何よりここに人は来ない

絶対あの子だと思って、
振り向いたそこに・・・・

「あ」

紛れも無く昨日の子だ
香織は安心して、その場に崩れ落ちるようにしゃがみこんでしまった

その香織の傍に、少年は何をいうまでもなく立っている
彼等の周りに沈黙が漂った