「このタイミングで、あの漫画のシーンって。偶然……じゃ、ないですよね?」


交互にシャワーで汗を流したあとに、ベッドの脇に腰を降ろしていたわたしが雪生を見上げて聞いた。

今日発売の誌面に、絶妙な内容のセリフのシーンが載ってることが、すごく不思議で。
でも、わたしたちが微妙な距離を置いてたのなんてたった数日なわけだし、そこまで細工するほどの時間も労力もなかっただろうし。


「……澤井さんに無理言った」
「ええ?!」
「いや。っていっても、大幅に変えたわけじゃなくて。雰囲気とかはもちろんそのままだし、変えたのはセリフの言い回しだけ」
「それでも……」
「写植直さなきゃなんないから、澤井さん怒ってたけど」


「はは」っと軽く笑い流しながら話してくれてるところを見ると、そこまで深刻な感じまでにはならなかったのかな……?
それにしても、直前でそんなこと。いつもわがままなんか言わないタイプの雪生が、突然そんなことを言ったんだから、澤井さんびっくりしただろうな。

……雪生の評価、下がってないかな。


「美希が今、なに考えてるのか、なんかわかる」
「!」
「……大丈夫だよ。こんな程度で、澤井さんとの関係壊れたりしないし。澤井さんって、サバサバしてるから」


頭をタオルで拭きながら、わたしの隣に腰を下ろした。