――――壊される。

雪生の肩に必死にしがみつき、残ってた理性飛ばしながらそれだけを思う。

荒く乱れた呼吸をし、脱力しながら放心したわたしの上から、低い声が落ちてきた。


「……ダメだ。もう、我慢できない」
「……っえ?」
「そんな顔と声で煽られたら……!」


切羽詰まった表情で、雪生らしくなく慌てるように自分の服を脱ぎ捨てる。
その一瞬の光景が、色っぽく男らしく。

今、この行為はなにかというのは知識でわかってはいても、体験するのは初めてなわけで。

下腹部の鈍い痛みと戦いながら、薄目で現実を見てみる。
そこには額に汗を浮かべ、切ない表情をした、愛しいひと――。


「ゆ、き……」


きっと、わたしに気遣って、なるべくゆっくりに動いてくれてるんだ。
時折、顔を歪ませる雪生を瞳に映しながら思う。

その痛みに僅かに慣れた頃、そっと片手を雪生の髪に触れさせた。

動きを止めて、わたしを見つめる雪生に、すごくすごく胸を締め付けられる。


「……ちょっと、乱暴すぎたよね……ごめん。コントロールが」
「ううん……そうじゃなくて」
「え……?」
「なんか、シアワセ」


こんな幸福感、今まで味わったことなかった。
いつしかこんなに好きになった人と、初めてを経験するなんてすごい幸せ。

「シアワセ」だなんて簡単に口に出来るものじゃないけど、今この瞬間はその言葉が自然と口から出る。