ほんとに僅かだけ、ニィと口角を吊り上げたのに気付いた。それは、色々“知ってます”ってことを示唆してるように。
ドクン、と脈を打つ。この人は何をどこまで知っていて、わたしの口からなにを聞きたいのか……。
どういう答えを口にすればいいのか全く分からずに。
ただ、せめて、と目だけは逸らさないように懸命になっていたら、向こうの方が先に視線を外した。
正直、ずっと見つめられ続けてるのが苦しい気がしていたから、ものすごく助かる。
「見る?」
「……?」
そして、突然、雰囲気をガラリと変え、柔らかい笑顔で差し出す漫画誌。分厚いそれに、ゆっくりと近づくと、やたらと古びていることに気がついた。
受け取り、表紙を眺めてみるけど、なんにもピンとくるところがない。
雪生の名前でもあるかな? と思ってもみたけれど、それもどこにも見当たらなくて。
だったら、これはなんだというのだろう?
もしかして、コレが、「渡したいモノ」だとでもいうのかな。
わかりやすく疑問の顔を浮かべていたら、「フ」と笑って外崎さんが指をさす。
「それ、ね。後ろの方に載ってンの。春野センセ」
「え? でも、表紙(ココ)には名前――」
「まだプロじゃなかったからな」
――「まだ」プロじゃない?? て言うことは……どういうこと?
全くピンとこないわたしに、明らかに溜め息をついて、今貰ったばかりの雑誌を奪い取る。そして、パラパラとページを捲ると、ピタリとあるページで手を止めた。