―――それからあともう一つ。
あたしは今日、矢沢君には内緒でお昼ご飯をお弁当として持ってきている。

どんだけ張り切ってるんだよって思われるかもしれないけれど、正直それも嘘ではないから矢沢君がどう対応してくれるのか、ちょっぴり楽しみで仕方がない。

料理は出来ないわけではないし、自分の腕にはちょっぴり自信があったりもする。
美味しいって言ってくれると良いな。なんてそんな事思いながら、あたしは徒歩で集合場所となっている山本駅まで向かった。

徒歩で山本駅まで向かったその数十分後、ようやく集合場所に辿り着きあたしは一旦「ふぅ」と息を吐き捨てた。

カバンの中から手鏡をゴソゴソと取り出して、何処も変じゃないか最終チェックをする。
じーっと鏡と睨み合いっこをしてあたしは「良し」と意気込むと、矢沢君が来ているかどうか、辺りをキョロキョロと鮮明に見渡した。


「………あ、」

すると遠くの奥の方に、もう大分見慣れた茶髪を発見した。