「お前、遊園地で良かったか?他に行きたいとこあったら、別に俺は何処でも…」

「う、ううん。良いよ、遊園地で。矢沢君がわざわざチケット買ってくれたんだし!それにあたしは矢沢君と一緒なら何処でも嬉しいから…」

「…………」

あたしが小さい声でそう言うと目の前の矢沢君は一瞬目を大きく見開いて、いきなり顔を真っ赤に染めた。

「……矢沢君?」

「ああ、くだらない事聞くんじゃなかった」

「えっ」

「取り合えず、当日少しでも変な格好して来たら、俺は即効帰る」

「だ、だから、リベンジしてみせるよ…!」

「お前の言葉は当てにならない」

「……う、酷い。矢沢君から誘ったくせに」

「…、うるさい」

矢沢君は小さくそれだけ吐き捨てると止めていた足をまた動かして、スタスタと前を歩いて行ってしまった。

「あ、だから待ってってばっ」

時々意外な事をしてくれる矢沢君は、いつも不意打ちであたしの心臓をドキドキさせる。
このままじゃあたしの心臓が堪えられなくなるのも時間の問題なんじゃないだろうか。

「矢沢君」

「何だ」

「誘ってくれて、ありがとう」

「…、別に」

「あたし、楽しみにしてるからね」

「好きにしろ」

やっぱり少し照れているのか矢沢君は素っ気なくそれだけ返して来て、あたしはそんなどうしようもない矢沢君にふわりと笑みが零れて、駆け足で矢沢君の隣に並んだ。