「……っ、…いきなりこんな事言って本当にごめんなさいっ」
「……ううん。心ちゃんが謝る事ないよ。…僕は、心ちゃんに好きだったって言われただけで十分嬉しいから」
「……久瀬先輩」
先輩は、いつもこうやってあたしの気持ちを少しでも軽くしてくれる。そんな先輩の気遣いがちょっぴり痛くて、ちょっぴり嬉しかった。
「あたし、久瀬先輩に恋をして良かったです」
「はは、何だか照れちゃうな」
「……久瀬先輩には何度も励まされました。本当に本当に、ありがとうございました」
あたしが心を込めてそう言うと、久瀬先輩はいつもの優しい笑顔で「どうしたしまして」とそう言ってくれた。
「……あ。でも、これっきり何もなかった事にするのだけは、やめてね」
「え……?」
「学校ですれ違ったりしたら、笑って手を振ってよ」
「……久瀬先輩」
「……それだけでも良いから、約束してくれないかな」
「え、えっと、…はい。……久瀬先輩が良ろしければ…」
あたしがもごもごとした口調でそう言うと、目の前の先輩は満足したような表情で「ありがとう」と小さく笑った。