その後、教室にまだ居るかなと思い全速力で久瀬先輩の教室へ向かったみたけれど、久瀬先輩は既にもう部活へと向かった後だった。
それからキョロキョロと辺りを見渡しながら、走る事数分。
「……あ、」
意外にもあまり手こずることなく、今から部活へ向かうと思われる久瀬先輩を、靴箱の前で発見した。
「く、久瀬先輩……っ」
あたしが聞こえるような大きな声で久瀬先輩の名前を呼ぶと、先輩はすぐあたしの声に気付いてくれて、そっとこっちへ振り向いてくれた。
「あれ、心ちゃん。どうしたの?そんなに急いで」
「……あ、いえ。えっと、こ、こんにちは…」
「うん。こんにちは」
ちょっぴり緊張してしまっていきなり挨拶をしたにも関わらず、目の前の久瀬先輩はニッコリと優しく微笑んでくれた。今でも久瀬先輩の極上スマイルには癒される気がする。
「心ちゃん?何か、僕に用事でもあったの?急いでたみたいだけど…」
「あ、そうなんですっ、あ、あの…、ちょっとこっちに来てくれませんか」
「え…?」
あたしは少しどもりながらもそう言うと先輩の手をそっと引いて、ひと気の少ない近くの廊下へと向かった。