「ちゃんと、久瀬先輩への恋に終止符を打たないと、前に進めない気がするの」

「…………」

「矢沢君と、対等に向き合えない気がするの」

「…………」

「だから行って来るよ。あたし、もう久瀬先輩の事好きじゃないから」

堂々とそう言うあたしに、矢沢君はじっと真っ直ぐな視線を向けて来る。
そんな視線がぶつかり合う中、矢沢君は観念したかのように「はあ」と一つ小さな溜め息を吐き捨てた。


「………、分かった。そんなに言うんだったら久瀬のところに行って来い。…その代わり、お前が戻って来るまで俺は待ってるからな」

「………矢沢君」

「早くしないと、あいつ部活なんじゃないのか」

「あ、う、うんっ、いきなりこんな事言ってごめんね…っ、校門前で待ってて。ありがとう」

「…ああ」

矢沢君はまだちょっぴり不満そうだったけれど、それでも渋々久瀬先輩と会う事に承諾してくれたからあたしは急いで久瀬先輩の元へと足を向けた。