矢沢君と正式にお付き合いをするようになって、早数日。


「矢沢君。あたし、久瀬先輩のところ行って来るね」

「は?」

今から一緒に帰ろうとしている矢沢君に、あたしは淡々と口を開いてそう言った。すると目の前の矢沢君は当然のように眉間にギュッと皺を寄せる。

「何で?」

不機嫌そうに低い声でそう聞いて来る矢沢君に、あたしはそっと言葉を続けた。


「……、久瀬先輩に、けじめをつけに行くの」

「けじめ?」

「うん。久瀬先輩が好きでしたって言うけじめ」

「……それ、わざわざ言いに行くのか」

「え?うん。好きでしたって言って来る」

あたしが淡々とそう言うと、矢沢君はもっと不機嫌なオーラを放出して不満そうに顔を歪めた。


「…………久瀬は、お前が自分の事好きだったなんて知らねぇのに、それをわざわざ言いに行く意味が分からない」

「え?ちゃんと意味あるよ」

「あ?久瀬の事なんて放っとけば良いだろうが」

「それじゃ、あたしが駄目なんだってば」

「は?」

あたしが反論すると、矢沢君はもっと眉間に深い皺を寄せた。