そんなあたしの背中を矢沢君はポンポンと撫でてくれて、その温かさにあたしは少しだけ高鳴っていた心臓がおさまっていくような気がした。
「まさか俺が、こんな地味な女に惚れるとはな」
「な、何よ、あたしだって矢沢君みたいな不良に惚れるなんて思ってもいなかったもん」
「あ?なんだと」
そんな他愛もない言い合いをして、二人で小さく笑い合った。
――――――此処に辿り着くまでいっぱい間違えていっぱい悩んでくじけそうになった時もあったけれど。
だけどその分、あたしの中で矢沢君の存在が大きくなっていったのも事実で。
思っていた以上にあたしの心は矢沢君のことでいっぱいだった。
そして目の前の矢沢君の心もあたしの事でいっぱいなんだと気付いた。
好きだと実感するまでに色々な事があったけれど、最初は矢沢君なんて眼中にもなかったけれど。
だけど今は、矢沢君が好きなんだと胸を張って言える。
―――これからもずっと、矢沢君が好きなんだと断言出来る気がした。
「これからもよろしくな、心」
「うん…っ、よろしくお願いします」
あたしのそんなかしこまった言葉に矢沢君はまた「ぶはっ」と噴き出していたけれど、――――今こうやって二人で笑いあえている事実が、とてつもなく幸せだった。