「………いやか?」
そんなか細い声で囁かれた言葉にあたしは返す言葉を見失ってしまう。
―――嫌なわけじゃない。本当に嫌ならこの状況からとっくに逃げているに決まっている。
そんな事分かっているはずなのに、わざと聞いてくる矢沢君は本当に卑怯だ。
「……っ」
あたしが決死の思いで首を横に振ると、矢沢君は小さく「ふっ」と笑みを零した。
「――――目、閉じてろよ」
そう言ってゆっくりと顔を近づけてくる矢沢君にあたしはどうしようもなく恥ずかしくなって、咄嗟にギュッと目を閉じると――――、
「……ん、」
唇に熱い感触が触れた。
人生で初めての、ファーストキスだった。
そこから数秒間、触れるだけだったキスがようやく解放され、あたしはあまりの恥ずかしさにバッと顔を下へ俯けた。
生まれて初めてキスをしてしまった事実にどうしようもなく心臓がバクバクと跳ね上がってしまう。