「心、ズバ抜けて歌上手いんだから、思い切って歌えば良かったのに」
「そんな、無理だよ。カラオケでも十分緊張するのに」
「恥ずかしがる事ないくらい、奇麗な声してるのにさー」
「由希の聴覚、可笑しいんじゃないの」
昼休みは4時間目の音楽の事で色々盛り上がり、今日も楽しくお弁当をたいらげた。
5時間目はあたしの大嫌いな体育で6時間目は運良くも気ままな自習で授業はお開きになり、放課後を迎えた。
「あたし今日さ、部活長引くらしいから心悪いけど先帰ってて?」
「あ、うん。分かった」
由希に言われた通りあたしはさっさと帰る準備をして教室を後にした。
「……はあ」
無意識に出る溜め息に何度も項垂れながら、あたしは靴箱へと向かう。
……ホント駄目だなあ、あたし。なんて思いながら靴箱へ到着すると、
「あれ、心ちゃんじゃないか」
「え…っ」
大分聞き慣れた明るい声が、あたしの耳に入った。
「……え、うわっ、久瀬先輩っ」