「や、矢沢君の事…?」

「うん。でもまずは、心ちゃんにちゃんと謝りたくて」

「え?」

そう言った蒼稀君は眉を下げて「ごめん」と謝ってきた。あたしは訳が分からず、ついオロオロとしてしまう。


「シンから聞いた。…心ちゃんに全部本当のこと話したって、」

「……!」

「最初は俺も絢と心ちゃんの事を聞いて動揺したけれど、俺自身やっぱりそうだったんだって思って…。だから、あの時俺が絢の事を暴露してなかったらって」

「いや、それは違うよ。教えてって言ったのはあたしだもん。蒼稀君は一つも悪くないよ」

「けどさ、俺が暴露しちゃった所為で今二人がすれ違ってるのは事実だろ」

「そう、だけど…あの時蒼稀君が言ってくれてなかったらあたしは何も分からず仕舞いだったわけだし、矢沢君と凄く仲が良いのにあたしに話してくれて嬉しかったよ、ありがとう」

「心ちゃん、」

心なしか、蒼稀君の瞳が揺れているようにみえた。あたしはそんな蒼稀君を安心させるように、優しく笑った。

蒼稀君が悪いだなんて、本当にこれっぽっちも思っていない。
むしろあの時蒼稀君が教えてくれていなかったら、あたしは身代わりだったと言う事を知らずに矢沢君の隣に居たんだと思う。