「心ちゃん、今ちょっといい?」

「え、あ、うん」

いきなり蒼稀君にそう言われ、あたしは戸惑いつつも「こっちこっち」と手招きする蒼稀君の後を付いて行った。

「ど、何処行くの?」

「ん?特にこれといった場所はないけどあんまりひと気がないとこかな」

薄く笑ってそう言った蒼稀君は「あ、別にやましい事じゃないよ」と最後に付け加え、4階の南館廊下まであたしを案内した。

「此処なら誰も来ないしいっか」

「…?」

そう言った蒼稀君に首を傾げて、「一体どうしたの?」と問いかけると蒼稀君は不意に困ったような顔をして「いや、シンの事なんだけどね」と口を開いた。

あたしはその言葉につい肩がピクリと反応してしまう。